MATERIAL DESIGN
メカデザインに関する考察
#1 旧三部作と『ファントム・メナス』の
デザイン指向に関する考察
INTRODUCTION
「スター・ウォーズ=特撮映画の代名詞」
『新たなる希望』公開以来、多くの人々がそのような構図を持ち続けている。
 スター・ウォーズは、一言で言ってしまえば、光と影がお互いになくてはならない関係であることを伝える物語である。光と影の因果関係はこれから公開される『エピソード』『エピソード。』で、より深く語られることになるだろう。
 そのような大命題を根底に敷いた上で描かれる物語が、難解な方向に進むのではなく、様々な意味での娯楽性を持ち合わすことによって子供から大人まで楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっていることこそ、スター・ウォーズの最大の特徴だ。
 この懐の深いフレームの中で描かれるストーリーに登場する様々なキャラクターや設定の細かさが、スター・ウォーズの魅力を決定的なものにしていることに異論はないだろう。
そしてキャラクター同様、物語に登場するオリジナリティに富んだ数々のメカニックのデザインも、子供から大人までを魅了するファクターのひとつである。特撮映画の主役は、主人公たちが乗るメカニックとも言えるのだ。
スター・ウォーズが特撮映画の代名詞ならば、そこに登場する宇宙船などは花形スターといってもいいだろう。
ここでは、スターウォーズのメカニックデザインの魅力にふれつつ、旧三部作と新三部作のデザインの変遷についてふれてみたい。
ORIGINALITY
■独創的デザイン
 Xウイングや、<ミレニアム・ファルコン>に代表されるスター・ウォーズのメカニックデザインは、これまでも様々な所で脚光を浴びてきた。
 日本では、池袋セゾン美術館において「ジョージ・ルーカス展」
[★1]と題された企画展が1992年に催され、その徹底したデザインワークに多くの人々が息をのんだ。
 実際に2〜3秒しか出ないシーンのために作成された、4メートル以上あるスター・デストロイヤーの側面部分の模型、実物大のランドスピーダーやスピーダーバイク、20センチの手のひらサイズから、全長173センチのものまで揃えられた数々の<ファルコン>の模型、各カットのために作成された仕様の違う数種のAT−ATウォーカー、そしてルークのかったレッド5仕様のXウイング……。そこには憧れのビークルたちが一同に終結していた。
 これら特徴あるプロポーションのメカニックデザインの模型や初期画を見ていると、ルーカスが当初からオリジナルを目指す姿勢を徹底していたことをうかがい知ることができる。
 中でもTIEファイターは最も独創的な形態をした戦闘機だ。スター・ウォーズ以前も以後も、TIEファイターを超える奇抜な形態をしたメカが登場する作品を私は知らない。
独創的という意味においては、<ファルコン>も同じである。ラルフ・マクォーリーの描いた<ファルコン>の初期デザイン画は、イギリスのテレビSFドラマ『スペース1999』に登場する「イーグル1号」のような長筒状のボディ前方にコックピットを付着させたスタイルだった。
[★2]
しかし、そのインパクトの弱さを指摘したルーカスは、デザインの再考を指示し、結果として同心円状に様々なパーツが集積したスタイルのデザインが<ファルコン>に採用されたのである。
[★3]
この同心円状デザインのモチーフが「宅配ピザ」であるという話はあまりに有名な逸話である。

 それに対して、躍動感のある推進性を強調したフォルムのXウイングは、少年なら誰もが憧れるであろう主人公メカ的要素の強い機体であり、バランス感の良いものとなっている。

大気圏内外飛行はもちろんのこと、単独飛行でハイパースペース航行を可能とするスター・ウォーズ世界の中で最も優れたメカでありかつ、主人公ルークの愛機、それがXウイング。しかし、このXウイングのデザインは、意外性という意味では他のメカデサインと比べると、いささかインパクトは弱い。だが、そのフォルムの完成度の高さは他のメカデザインの追随を許さない位に完成されたものといえる。
スター・ウォーズ唯一の正統派メカがXウイングなのだ。
[★1]ジョージ・ルーカス展の告知チラシ
この企画展のパンフレットは、後に英訳され「ジョージ・ルーカス・アーカイブ」と題されて全米で出版されました。なお、常設展を持たず企画展をコンセプトにしてきたセゾン美術館は1999年2月をもって閉館しています。
スターウォーズ氷河期に開催されたこの展示会は、SWを中心としたLFL作品の模型や撮影プロップを「作品」として扱う姿勢を徹底したものでした。
このアート展のパンフレットは、実際の制作過程の資料、そして模型の解説などから構成されており、SWが生まれる過程を描いた真実のファイルともいえる内容でした。

最近「スター・ウォーズ ファクトファイル」という名で、物語の設定について語っている情報誌がありますが、これと対局に位置するのが上記展示会の姿勢でした。

[★3]ミレニアム・ファルコン号

TIEファイター
SF映画史上もっとも独創的なスタイルをした戦闘機言っても過言ではないでしょう。TIEとはTWIN ION ENGINEの略称で、左右の板はソーラーパネルという設定らしい。
スタディ模型
ディティールはともかく、初期の時点で概念が完成していた事がわかります。
ラルフ・マックォーリーの初期デザイン画をみると、Xウイングの方はエンジン部分の形状など見慣れない形をしていますが、TIEの方は既にデザインがフィックスされているのがわかります。他のメカデザインと比較しても、TIEのデザインは安産だった事を物語る一枚です。
安産というよりは、瞬発力のあるアイデアが瞬時に形になったのでしょう。

[★2]下のA〜Gの中の、どれがファルコン号の原型でしょう?
A
B
C
D
E
F
G
こたえ:
全てファルコンの初期デザイン案です。
Aは船首のデザインを替える形でブロッケードランナーのデザインに採用されていますね。FとGはスタディ模型です。こういった多数のデザイン検討を経たのちに、オリジナリティに富んだミレニアム・ファルコンのデザインは生まれた訳です。
STORY TELLER
■過去を語るデザイン
 これら旧三部作のメカには、光沢のある新品は登場しない。
[★4]
光沢どころか薄汚れていて、継ぎはぎで、ときには被弾したままだったり、改造がほどこされた跡があったり、改修の痕跡が見られるものばかりであった。<ファルコン>に至っては、ルークにして「鉄クズの塊」、レイアにして「このオンボロ」と称されている。リサイクル文化に優れるスター・ウォーズ世界においてすら、「ボロ」と形容されるほどの機体だったわけである。しかしこの<ファルコン>の再構築されたフォルムこそが、スター・ウォーズの世界観を体現しているといえる。
 『新たなる希望』は『エピソード「』である。「「」と言うことは、この世界にはそれ以前が存在するのは当然のことだ。冒頭においてオビ=ワン・ケノービの言葉によって「クローン大戦」やルークの父の話が語られるが、我々観客は<ファルコン>のような過去を持つ機体からも、それ以前から脈々と流れるスター・ウォーズ・サーガの存在をうかがい知ることができるのである。
 <ファルコン>は、原型となっている機体の品番も設定されているが
[★5]、どこまでが原型でどこからが改造なのかハッキリとした設定は与えられていない。また、旧三部作をとおしても<ファルコン>は常に改造をほどこされていた。ホスのエコー基地でもハン・ソロは何やら改修工事を行っていたし、各シーンでは、サイドのディティールが少しずつではあるが違うことが確認できる。また、上面、下面の目地割や錆止めのような赤い塗装も、若干であるが場面によって異なることが確認できる。内装にしても、モンスターチェスは『帝国の逆襲』以降は撤去されており、パッセンジャーシートも同様になくなっている。つまり、私たちが見慣れている<ファルコン>は、完成されたデザインではないのである。ときとともに、またその需要によって様々に形態を変容しているのだ。
 時間と用途によって変容していくような形態が特徴という意味では、『帝国の逆襲』のラストでルークが義手の手術を受けた病院船
[★6]も同様である。艦首の何層にも重なったボリュームは、それぞれが何らかの機能を持った設備ユニットであろう。このユニットは、用途によって差し替えとまではいかないまでも、大々的な改修を行うことが可能であることをそのシルエットが語っている。この機能美、形態美すら供え持つ美しい機体も、過去を語る力を持った意匠によって造形されているのである。
 この解体再構築され、過去を語る力を持ち合わせたデザインこそ、類い稀なスター・ウォーズのメカニックデザインの特徴なのである。
病院船として登場したこの機体は、設定ではもともと帝国軍の巡洋艦なのだそうです。それを反乱軍が拿捕して医療船に改造したものが『帝国の逆襲』ラストに登場したこの船だという設定が与えられています。そのわりには映画で帝国軍がこの船を使用している様子は描かれいせんでしたね。
[★4]唯一の例外は『ジェダイの復讐』で皇帝が第2デス・スターを訪問する際に使用したインペリアル・シャトルがあります。

[★5] 「コレリアン・エンジニアリング・コーポレーション社製・YT−1300トランスポート」というのが<ファルコン>の原型となった機体だ、という設定が映画公開の後に与えられた。

[★6] この病院船は、帝国軍のフリゲート艦を反乱軍が拿捕して、医療艇に改修したものという設定が『帝国の逆襲』公開後に用意された。正式名称はKDYネビュロンBフリゲート。
病院船の初期コンセプト画1
ユニットを積層させた船首部の考え方を示しているコンセプト画。コンポジションは既に完成しています。
病院船の初期コンセプト画2
ジョー・ジョンストンの初期スケッチ。こちらは全体的なフォルムのスタディ画です。
NEW LINEUP
 ところが16年ぶりのシリーズ最新作となった『ファントム・メナス』を観ると、そのスター・ウォーズのデザイン感覚がいちじるしく変貌していることがわかる。
 冒頭に登場するクワイ=ガンたちが乗ったリパブリック・クルーザー
[★7]は、『新たなる希望』冒頭に登場したブロッケードランナーの系譜を受けたデザインとなっている。
 
しかし、クイーン・アミダラの専用船ロイヤル・スターシップや、アナキンが乗った黄色い小型戦闘機=ナブー・スターファイターはどうだろう[★8]。これらのデザインに関してのスター・ウォーズファンの意見は賛否両論のようだ。
 目利きのワトーを「ヌ〜ビアンか、悪くねぇ」とうならせたクロームメッキ仕上げの流線型の宇宙船、それがロイヤル・スターシップだ。「ヌビアン」とは、このナブー王宮特製のカスタムクラフト宇宙船が搭載しているエンジン“JType 327 Nubian”を指して言っているのだろう。
 『ファントム・メナス』では、アミダラ専用船以外の同型エンジンを搭載した宇宙船は登場しないが、少なくともそのホロ映像を見ただけのワトーが「ヌビアン」と認識できたということは、その全体的なフォルムが「ヌビアンエンジン搭載機」であることを語るに至るほど特徴的なもの、という設定なのだろう。
 ともかく、このロイヤル・スターシップの光り輝くクロームメッキ鏡面仕上げのボディテクスチュアと、流れるような流線型のデザインは、これまでのスター・ウォーズの世界にあるデザイン系譜のどれにもあてはまらないものである。
 では、どうしてこのようなデザインを『ファントム・メナス』では主役級の宇宙船に採用したのだろうか。
[★7]リパブリック・クルーザーは、上記ファルコンのデザイン画Aにもていおり、ブロッケードランナーへの系譜が想像できるデザインとなっています。
FOR THE STREAM LINE
 これまでのスター・ウォーズのメカニックデザインは、どれもオリジナリティを重視して創造されてきた。また、独特の世界観を出すためにも、光り輝く新品ではなく薄汚れて年季の入ったボディを持つことが課題でもあった。
 しかし、16年振りの新作となった『ファントム・メナス』の主役メカであるロイヤル・スターシップは、光り輝くボディと流線型の美しいフォルムが特徴となっているのは先述したとおりだ。
このロイヤル・スターシップはスター・ウォーズ・メカニックデザインの特徴である「汚れ」「年季」という要素と相反するデザイン方向が示されている。

 では、オリジナリティという意味ではどうだろうか。
 ロイヤル・スターシップのデザイン要素を「形態(流線型)」と「質感(光輝くクロームメッキ)」の二つの側面からみてみたい。

流れるような流線型のフォルムは、戦前のバウハウスに端を発するインダストリアルデザインの流れを受けた工業製品に多用された。鉛筆けずりから蒸気機関車、はたまた豪華客船まで、当時の未来指向デザインのカギは流線型にあった。
 しかし、そういう時代背景の中で製作された、1950〜1960年代のSF作品で描かれる宇宙船の主流は、流線型を基調としているものは存在しない。
 1950〜1960年代のSF映画に登場する宇宙船の、そのほとんどが円盤もしくはロケット(銀色のくさび形ロケットに羽を付けたようなものを含む)の形状をしていた。
 たとえば『地球最後の日』(1951年、ジョージ・パル監督)の箱船ロケットは、ジェット・コースターのように、レールを使って宇宙に飛び出すロケットが描かれた。いわゆるロケットに尾翼と主翼をくっ付けたものである。また、『火星人大侵略』(1953年、ウィリアム・キャメロン・メンジス監督)で描かれた発着場に待機状態になっているロケットも、同様なフォルムを持つものであった。つまり、この時期の宇宙船のデザインは決まって<サンダーバード1号>のような形態であったのである。
 ときを下って70年代になると、『猿の惑星』(1968年、フランクリン・シャフナー監督)で着陸用として使われたポッドのような、くさび形を基調とした流線型のものも確認できるようになってくるが、意匠的に洗練されたものではないし、それ自体が宇宙船と言うわけでもなかった。また、『ダークスター』(1974年、ジョン・カーペンター監督)のスカウト・シップは、ロケット型から発展した長細いフォルムの流線型であったが、どちらかというと旅客機の主翼と尾翼をとったような形態だ。旅客機の延長という意味では、『2001年宇宙の旅』(1968年、スタンリー・キューブリック監督)の冒頭にてヘイウッド・フロイド博士を宇宙ステーションに誘うシャトルも同様である。
 ロイヤル・スターシップのデザインは、一見アメ・コミ等にサラリと出てきそうではあるが、SF映画史上を振り返ると、これに似た形状の宇宙船は意外なことに存在しないのである。では、実在する飛行機や宇宙シャトルではどうだろうか?

ローウィの鉛筆削り(最上)
オーシャンライナー号(最下)などバウハウスの系譜を受けた流線型デザイン製品
FORMING
 クロームメッキという質感こそ違うが、実在する軍用機にロイヤル・スターシップに似たシルエットを持つものがある。航行速度マッハ3以上という世界最速のアメリカ空軍偵察機SR−71<ブラックバード>である[★8]
 マッハ3で、レーダーに捕捉されることなく敵地上空を飛来することが目的のこの偵察機は、ステルス効果を持つ絶妙な機体形状をしている。そして、マッハ3という超高速飛行を可能にするために開発されたターボ・ジェットエンジンを搭載するために、爆撃機並の巨大な機体が設計された。
 この<ブラックバード>の正面図、平面図を見ると、そのプロポーションがロイヤル・スターシップに似てことがわかる。<ブラックバード>の中央後部に、居室を設ける設計をすれば、即ロイヤル・スターシップになるとも言えるかも知れない。
 また、ロイヤル・スターシップの機体設計が、ヌビアンエンジンを搭載することを前提に行われたという設定すら、<ブラックバード>の逸話と符合する点も興味深い。
 しかし、<ブラックバード>のボディは沈むような黒鉄色である。その巨体が飛来するさまは、平和とは無縁でありエレガントなイメージのロイヤル・スターシップとは雲泥の差がある。
 では、あの光り輝くクロームメッキの彫刻のような意匠のインスピレーションの源になったものは何なのだろうか?
[★8]世界最速を誇るSR-71
成層圏にて太陽光を受けて光り輝くジュラルミン製ボディがロイヤル・スターシップを彷彿させます。
上から飛行中のSR-71、上部伏図
そして正面図。

CGI
 過去のスター・ウォーズのメカたちとロイヤル・スターシップの本当の意味での物理的な相違点は「模型によるライブアクションかCGであるか」という点に集約される。
ロイヤル・スターシップのビジュアルは、実物大の昇降ハッチのシーンを除けば、100%CGで作成されている。CGだったからこそ、鏡面仕上げのボディに映り込む周囲の光景すら完璧に表現できたのである。
 フルCGで描かれた鏡面仕上げの宇宙船というと、史上初の本格的CGI導入作品として話題となった『ナビゲイター』(1986年、ランダル・クライザー監督)がある。この映画に登場する未確認飛行物体「ナビゲイター」は、『ターミネーター2』(1991年、ジェームス・キャメロン監督)のT−1000型液体人間のような質感をした飛行体であった。しかし、その形状はドラ焼きのようなUFOにありがちな形であり、残念ながらそこにオリジナリティは存在しなかった。CGでつくるなら、CGでしかなし得ない表現を求めるのはクリエイターとして当然のことである。しかし、そのアイデアを具現化するときに、具体的なデザインまで及ばなかったのが「ナビゲイター」の大きな失点であった。
 『ファントム・メナス』は、『新たなる希望』より32年さかのぼった時代の話である。メカに限らず様々なデザイン監督を務めたダグ・チャンは、この時代背景を具現化するために、基本コンセプトとして'40〜'50年代のデザインをイメージしたと語っている。
 となると、やはりロイヤル・スターシップのデザインは系譜としてはバウハウスの精神から排出された流線型の交通機器をイメージしてデザインされたと考えるのが正しいだろう。
 つまり、<ブラックバード>の機能性から生まれたプロポーションに、N・B・ゲデスのオーシャンライナー号やエアーライナー、ローウィの鉛筆けずりなどといった躍動感のある流線型を主体にしたデザインをほどこし、CGでしか映像化することができないクロームメッキ鏡面仕上げという仕様をほどこしたのがロイヤル・スターシップなのである。
 また、ダグ・チャンはILMのスタッフとして『ターミネーター2』の製作にも視覚効果美術監督として参加している。つまり光り輝くクロームメッキはお家芸でもあったのである。

 このように検証してみると、ロイヤル・スターシップのデザインは、懐かしさを感じる形態ではあるが、実は今まで見たことのないビジュアルを求めてクリエイターたちが狙って創出した独創的な宇宙船デザインであることがわかる。
 このデザインは、映画に登場した宇宙船デザインという枠を越えて、1つのインダストリアルデザインとして、造形物として、様々な分野で評価されることになるだろう。
 コスチュームデザインにしても同様であるが、『ファントム・メナス』におけるインダストリアルデザインは、ハイアートとして評価されるものを目指して製作されている。この精神は、シード内にさりげなく置かれている椅子などにも反映されている。ヴィトラ・デザイン・センターの椅子コレクションにもエントリ−されそうなこれら椅子のデザインとテイストを合わせながらも、スター・ウォーズの過去のメカニックに引けをとらない魅力をもったロイヤル・スターシップは、『ファントム・メナス』が何を目指しているのかを体現しているのである。
SELF QUOTATION
 ナブー・スターファイターのデザインが同じく流れるようなフォルムであることについても同様の解釈ができるだろう。ただ、なぜクロームメッキと発色の良い黄色のツートンカラーが使用されたかについては、少し違った見解ができそうだ。

 なぜクロームメッキのノーズを持つ黄色い機体なのか? 
おそらくこれはルーカスのお遊びと考えることができる。
『アメリカン・グラフィティ』(1973年、ジョージ・ルーカス監督)でトール・ルマッドが乗っていたフォード・デュース・クーペを思い出してほしい。改造されたボンネットとフェンダー部分は、輝くクロームメッキ鏡面仕上げであり、車体の色はイエローであったではないか。
[★9]
おそらくルーカスは、この配色をナブー・スターファイターに引用したのだろう。バトルドロイドの背中にさりげなく「1138」
[★10]という烙印を押すなどの遊び心を持つルーカスが、その程度の自己作品からの引用を行うことは十分考えられることである。
そして『エピソードII・クローンの攻撃』では、コルサントの大都市でのカーチェイスが行われるが、ここでもフォード・デュース・クーペは健在だ。

★9 
★10 アナキンが通商連合のマザーシップを撃破し、バトルドロイドたちが一斉にパワーオフとなるときに、ジャー・ジャーの近くに立っているバトルドロイドの背中をみてみると、象形文字のように崩された「1138」の文字が記されてます。この1138とは、当然ルーカスの初監督作品『THX−1138』からの引用です。『新たなる希望』にも「1138」はセリフで登場していますね。
ATTACK OF THE CLONES
『クローンの攻撃』のデザイン検証については、追ってこの場でおこなっていきたいが、基本的にはセフル・クオートが主体となってゆくだろう。
つまり、『ファントム・メナス』で描かれた文明社会を基点として、旧三部作へ引き継がれるべくして、その前身的なデザインモチーフが散りばめられる事が自明だからである。
2002年4月の時点で、『クローンの攻撃』の4つの予告編が公開されている。これら予告編を見るだけでも、様々な要素が描かれていることが確認できる。
が、これらについては本編をこの目で観たのちに整理してゆきたいと思う。

 かくして、かつての<ファルコン>とXウイングに相当するロイヤル・スターシップとナブー・スターファイターは、新しいスター・ウォーズ世界のデザイン感覚を築きあげたと同時にサーガの基点となる時代を築きあげた。
この優雅なフォルムの2つの機体は、スター・ウォーズメカを語る上で、大事なものとして語られていくことだろう。

ここから旧三部作へのデザイン的なメタモルフォーゼが始まるのである。


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